本質的なブランディングの第一歩は”知る”こと
2022.11.06
読んだ本のまとめもやってみようと思います。
1発目は「DRAFT宮田識 仕事の流儀」
グラフィックデザイン界の老舗であり今なおトップを走る事務所の一つDRAFTの創業者であり代表宮田さんの仕事への考え方をまとめた本です。
若い人向けを意識して編集された本ではあるそうなのですが、ブランディングデザインに関わる人全てに役に立つ情報が詰め込まれているのではと思いました。
mono. blogの書評では、本の中から3つのテーマに絞って自分なりの感想も交えながら整理する試みをしてみようと思います。 ちなみに、あえてなるべく読み返さずに整理しているので少し本の記述や主旨とはずれている部分があるかもしれません。 でも、読み返すとどうしても引用が増えちゃってただ本の内容羅列するだけになりそうだし、自分の言葉として残らない気がするので一旦この形でやってみます。
記事のタイトルも、自分の感想をもとにで付けてみました。
1.責任を感じる役目(自分らしさ)が人を成長させる
一つ目がこれです。
仕事において「自分らしさ」が大事だということを本の中で繰り返し説いていました。
ではなぜ自分らしさが必要なのか?
その答えも数多く触れられていたのでどこにフォーカスするか迷いましたが、特に印象に残った理由の一つが見出しの内容ですね。
「この分野が自分らしい分野だ」と思える役目を見つけて、その役割を負うことで責任が生じる。責任が生じるとなんとかその役目を全うしようとするし、上手くいかなければ分かる人に聞いたりしてでも何とかしようとする。その中に成長があるという話ですね。
経験則としても分かる気がします。やっぱり私自身webの人でありデザインの人という役割を掲げるようにしてから、その分野で頼られた時に弱いところは見せられないという気持ちになるようになりました。
内心「この分野ちょっと苦手なんだよな・・」と思うご相談があったりした時は、プロジェクト開始までの間に参考になりそうなデザインを必死にトレース練習したり。笑
何とかその役割を果たそうと必死になります。
もしデザインという看板を掲げず、その分野に責任やプライドを持っていなかったら簡単に逃げられちゃいますからね。
ちなみに、見出しの候補としてもう一つ迷ったのは、自分らしさがないと代替可能な言われたことばかりやる人になっちゃうという話です。 代替可能な人や会社になっちゃうと、競争力も落ちるし、衰退していくばっかりに陥っていく。
そうならないためにも自分らしさとは何か?を意識しながら日々の仕事や活動に取り組みたいです。
2.本当の意味でブランディングされている企業は各業界1社くらい
少し極論かもしれないとは思いましたが、宮田さんが仰りたかったのは多分それくらい本質的なブランディングって難しいんだよ。ということだと思います。
宮田さんの定義によれば、ブランディングとは「あらゆる面で差異化され、揺るぎないイメージを持つ存在。100年続くような存在」とのこと。 バッグで言うならエルメスだと例えていました。
今は単純に売上や知名度を伸ばすことがブランディングと呼ばれるケースも多い。 その考え方についてはっきりと否定はしていなかったですが、少なくとも宮田さんはそうではなくて、自分が亡くなった後もずっと続くようなしっかりと軸のあるブランドを作っていきたいと考えているようでした。
「ちょっとくらい高くても買ってもらえるためにどうするか?」を考えるのが大事という話があったのですが、これは何かを作る人であれば絶対意識しておいた方が良いことだなと思いました。
ちなみにこの本の後半ではいくつかのDRAFTさんの事例が紹介されているのですが、生茶のリブランディングの事例などは年単位の期間をかけて、そもそも商品開発のアイデア出しからプロジェクトに関わり、納得のいく商品に辿り着くまでデザインには一切着手しなかったとのことです。
しかし、最終的に出来上がったパッケージデザインは、そこまでのストーリーを見事に表現したとても深みを感じるもので、実際の成果も記録的な結果を出したとのこと。本当のブランディングとは何かを考えさせられる内容でした。
3.“知る”ことが全てのはじまり
この本では終始”知る”ことが大事だという話が散りばめられていました。
ブランディングにおいて、クライアントに対してしっかりと提案・発言できることは大事だが、 自信を持って発言するためにどうするか? それは相手を知ること。
相手の事情が分かるから、どんな発言・提案が適切か考えることができる。 相手を知ろうとすることでお互いにリスペクトし合うことができる。
宮田さんは、よくクライアントの工場や研究所、店舗などに足を運ぶそうです。 モスバーガーのブランディングに携わっていた頃はマネージャーの顔を大体覚えるくらいまで店舗に通っていたそうです。
そこまで知るようにしていると、クライアントと互いに信頼関係が生まれるようになり、本質的な部分から相談をもらえたり、逆に提案したりできるようになるそうです。
ちなみに雑誌でやっていた連載コーナーで、読者から「離職率改善のために良いインセンティブがないか?」なんて相談を受けたこともあるらしいのですが、 その改善策も一辺倒な答えなんてなくて、そもそも社員のことをちゃんと知って、今いる社員にとって何がインセンティブなのか?を理解しないとどんな施策打っても意味ないよね。と。
ブランディングだったり、上流工程をやりたいという人は多いですし、私自身もそう思っていますが、そのためには提案力が必要と思われがち。 提案力が必要ということ自体は間違ってないかもしれないですが、提案力って、つまり少しでも多くのことを知ることが根源にあるということですね。クライアントのこと、サービスのこと、業界のことetc。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
mono.もブランディングを強みに謳っているので、領域や規模は異なりますが自分と照らして考える話が多い本でした。
ちなみにまとめてみて気づきましたが、
1.の項目は自分らしさを知る話、3.の項目は相手らしさを知る話 2.の項目は1と3を掛け合わせて最高のブランディングを実現した話。
ちょっと順番が歪になっちゃいましたが断片的にまとめた3つの話って実は繋がってるんですよね。
徹底的に相手の本質を知り、自分の強みや個性を知り、そうすることではじめて本当の意味で価値あるものが生み出せる、ということがこの本を通じての一つのテーマなのかなと思い、記事のタイトルにもしてみました。
大分話を絞ってご紹介しているし、私の解釈的な話も混ざってしまっているかもしれないので、ブランディングに関心のある方はぜひ原文を読んでみてください。
ブランディングの教科書
人によって定義のぶれやすいブランディングについて、言語化から実践するための方法までが一冊にまとまっています。